そのルーツ
千社札と書いてせんじゃふだ(せんしゃふだ)と読みます。世の中安泰と家内安全を願う千社参りの札を、略して千社札というようになったとされています。起源は古く、元々は願や歌などを木札にしたため、神社仏閣に納札する風習でした。江戸時代に入ると、地方からお参りに来た庶民が幸運を祈願するととともに、自分が来た証拠として、名前や出身地などを書いた紙札を、鳥居や札所(札を納めるところ)などに貼るようになりました。
やがて、信仰から粋な洒落心を持つ庶民の遊びとしてブームになります。江戸時代中期になる頃には、名前と出身地を書いただけのシンプルなものだけでなく、美しい絵柄入りで印刷したものが作られるようになり、庶民の中にファッションとして浸透していきました。 洒落をひねったものや、浮世絵絵師が作った本格的なものまであり、千社札文化が花開いたのです。千社詣の発祥の地である京都でも、江戸から千社札が伝えられ流行しますが、江戸に比較すると墨一色の地味さで趣があります。
現在の千社札
現代でも千社札の愛好家は多く、神社に行くと、とてもたくさんの千社札を見ることができます。じっくり見ると、相撲の力士や芸能人のものも見受けられます。それぞれ意匠に凝っていて面白いです。最近ではお祭りでも、配られることが多いようです。元々は手漉き和紙に木版刷りという凝ったもので、手作りの高価な物です。マニアが鑑賞、コレクション用に作る交換納札というものもあります。現在では手軽なシールタイプが主流で、自分の身の回りや車に貼って楽しむステッカーとして、とても人気があります
千社札の大きさ・文字
千社札本来の基本サイズは、一丁札と呼ばれる紙サイズで、幅58ミリ×高173ミリです。札には枠(子持ち罫囲み)があって、この中に文字などを入れます。子持ち囲みは2重罫線のことで、外枠が太く内が細くなっています。罫囲みの寸法は、外寸で幅48ミリ×高さ144ミリで、1:3の比率です。右のサンプルは伝統的な比率を守って作った縮小見本です。上部に余白がつけてあります。
千社札に使われる文字は江戸文字です。太くて力強い筆文字です。江戸文字には皆さんもご存じ、歌舞伎で使われる勘亭流や、寄席で使われる寄席文字、相撲の相撲文字などがありますが、千社札には力文字(もしくは籠文字)と呼ばれる格別力強い文字がよく用いられます。とても迫力がありますね。元々は色々な書体を使っていたようですが、明治の頃になって書体の統一が行われたようです。
千社札の貼り方
元々が神仏信仰のものですから、神社仏閣だからといって所かまわず貼ってはいけません。貼ってよい所が決められていますから、そこに貼ります。また人の納札の上に重ねて貼らないこともエチケットです。天上や柱の上の方など、手の届かないところにも、たくさんの千社札が貼られています。これは「振り出し竿」という継ぎ足し式の竿を使って貼ります。
本物の?千社札
本来の千社札は和紙に木版で刷るという大変高価なものです。自然素材ですし、糊もそくいと呼ばれる天然糊を使って貼りますから、木造建築である神社仏閣を痛めません。年月が経つと紙の部分が落ちて、文字の墨部分のみが残り、とてもいい雰囲気になります。しかし近年はステッカータイプが増えたため、禁止される所が多くなってきました。
身近に楽しむ千社札
難しいことはさておいて、千社札の楽しいところは、手軽に自分のアイデンティティが表現できるということです。要は名入りのステッカーと同じことで、それも和風というところが新鮮でいいですね。しかもステッカーと違うところは、お守りのように神仏に拠り所があるということです。当ショップで提供している千社札は、伝統的な千社札の文化を現代風にアレンジして、身近なところで楽しもうというのがコンセプトです。ぜひ自分のお気に入りの新・千社札を手に入れ、遊び心で満願成就といきましょう。